女性がパンプスを“履かないといけない”のはなぜ?徹底的に考察してみた
女性の足元を華やかに彩り、仕事からプライベート、冠婚葬祭まで、あらゆるシーンで活躍する「パンプス」。脚をきれいに見せられる、小顔効果が期待できるなど、女性にとって嬉しいメリットがたくさんあります。
しかし、かかとが高いパンプスは足に負担が掛かりやすく、無理して履くと、外反母趾や靴擦れなど、健康に悪影響を及ぼしかねません。
それでも社会では、身だしなみやマナーとして、女性が職場でパンプスを着用することは“当たり前”という風潮があります。規則とはいえ「どうして足を痛めてでも履かないといけないのだろう」と疑問に思っている女性も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、職場でのハイヒール強制へ抗議するとともに、性差別の撤廃を訴える「KuToo運動」に焦点を当て、“女性がパンプスを履く必要性”を徹底的に考察してみました。
パンプスを履くことが求められる社会
日本では、服装に関する就業規則として、女性従業員へのパンプスの着用を義務付けている企業が数多く存在します。特に、航空会社、ホテル・ブライダル系、ショップ店員、金融機関などの接客が多い職業では、パンプスの着用が必須となっていることがほとんどです。
中には以下のように詳細なルールを決めている企業もあります。
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ヒールの高さは5cm以上
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色は黒に限る など
どうしてこのような規定が定められているのか?
その理由について共同通信社がアンケートを実施したところ、企業からは「顧客に信頼感を与えるため」「制服との調和を保つ目的で」「統一美」といった回答が寄せられたそうです。
女性へのパンプス着用が求められるのは、日本だけではありません。イギリスでは、受付として働く女性が、勤務中のハイヒール着用を拒否したことで解雇を命じられ、裁判にまで発展した事例もあります。
このように、パンプスの着用規定を設けている企業は多く、職場で女性がパンプスを着用することは、さも常識であるかのように考えられてきました。
そんな社会の“当たり前”の風潮に、一人の日本人女性が異を唱えたことがきっかけで始まったのが「KuToo(クツー)運動」です。
KuToo運動とは?
KuTooとは「靴(くつ)」と「苦痛(くつう)」を掛け合わせた造語で、女性に対して、職場でのハイヒール着用強制の禁止を求める運動です。
セクハラなどの被害体験に“私も被害者だ”と声を上げる「#MeToo」のムーブメントになぞらえています。
まずは、KuTooが始まったきっかけと、この運動に対する政府や企業の反応をご紹介します。
きっかけはTwitterのつぶやき
KuToo運動を始めたのは、俳優やライター、アクティビストとしても活動している石川優実さんです。
当時、本業とは別に葬儀場でアルバイトをしていた石川さんは、就業規則としてハイヒールを強制され、足を痛めてしまいます。
そして、そのことを「なんで足ケガしながら仕事しなきゃいけないんだろう、男の人はぺたんこぐつなのに」と、Twitterでつぶやきました。
この発信は多くの女性たちの共感を呼び、”#KuToo”というハッシュタグとともに、約3万回シェアされ、半年で1万8000以上もの署名が集まります。
その後、石川さんは雇用主が女性にハイヒール着用の強制を禁止する法律の制定を求め、署名と要望書を厚生労働省に提出しました。
KuTooはパンプスそのものを否定する運動ではない
石川さんは「パンプスそのものを無くすべき」とは言っておらず「履きたい人はこれまで通り履いても良い」という趣旨の発言もしています。
「パンプスを無理して履き続けることは、外反母趾や、足の痛みを引き起こす原因になる。男女関係なく、ケガをしたり、健康に悪影響を及ぼしたりする服装規定を設けること自体がおかしいのではないか」というのが、石川さんの主張です。
政府や企業の反応
石川さんからの要望書の提出を受け、さっそく国会ではこの問題が取り上げられます。
厚生労働大臣は、職場でのパンプス着用を「社会通念に照らして、業務上必要かつ相当な範囲」と答弁し、事実上“容認”する考えを示しました。
一方で「足をケガした労働者に強制する場合は、パワハラに該当する」と、否定的な意見も述べ、最後に「この問題の認識を高める必要がある」と締めくくっています。しかし、大臣の発言の中で、具体的な法律の制定についての言及はありませんでした。
また、KuTooが国会をも巻き込む社会問題となったことで、日本の大企業では、服装規定を見直そうという動きが出始めます。
通信キャリア大手のソフトバンクは、社内ルールを変更し、スニーカーやオープントゥの着用を認めるようになりました。大手航空会社のJAL、ANAでも靴の社内規定を一部緩め、従業員が働きやすい環境作りへの取り組みが進められています。
KuToo運動は、海外でも話題となりました。アメリカの有力紙、ニューヨーク・タイムズは「ハイヒールの専制と闘う反逆者」の見出しで、石川優実さんのインタビューを掲載。紙面では、企業の服装ルール、性差別の現状など、日本の現状を詳しく紹介しました。
KuToo運動についての考察
KuToo運動は国内外で大きな反響を呼び、事業主が職場でハイヒール着用強制を禁止する法律制定を求めて、署名と要望書が国に提出される事態に発展しました。
この話だけを聞くと、KuTooは ハイヒールの着用強制を回避するために、職場のドレスコード変更を目指す活動に見えるかもしれません。
しかし、KuTooの最終目的は 「性差別の撤廃」と「社会通念を変えること」であり、そのわかりやすい実例の一つとして、ハイヒールが挙げられているだけだと考えています。
現に、KuToo運動で「ドレスコード自体を見直すべき」という声はあまり聞かれませんし、海外でも、その辺りは全然話題に出てきません。それは、どうしてなのでしょうか。
ここでは、KuTooがこれほどまで大きな問題となった理由と、この活動の目指すものとは何かを考察してみました。
「職場のドレスコード」がこれほど問題になったのはなぜ?
そもそもドレスコードというのは、その場の雰囲気の統一を図ることを目的として、主催者がゲストにお願いする服装規定です。例えば、結婚式というおめでたい場では、華やかな装いに合う、フォーマルなパンプスを履くことが求められます。
また、卒業式や入学式でも、ハレの日にふさわしいように、カジュアル感の出ないハイヒールを履くのが一般的です。これらのドレスコードは、“TPOに合わせた装いをすべき”という理由で求められているわけで、ある意味マナーの話でもあります。
しかし今回、職場のドレスコードがこれほど問題となったのは「“女性だから”ハイヒールを履かなければいけない」という社会通念が「性差別の可能性がある」と思われたからではないでしょうか。
実際、KuToo運動は男性の賛同者も多く「男性はネクタイとジャケット、革靴の着用が必須」という職場のドレスコードに対する、反対の意見も寄せられています。この運動の本質が「社会通念」と「性差別」であるとすれば、男性が革靴やネクタイの着用強制に抗議するというのも、KuToo運動の一つだといえるでしょう。
KuToo運動の目指すものとは
「ネクタイはパンプスと違ってケガをしないし、締め具合を調節すれば苦しくない」と思う意見もあります。
しかし、男性の中にはネクタイを着用していて、危うくシュレッダーに巻き込まれそうになった、という経験を持つ方もいます。女性がパンプスで足を負傷するリスクがあるのと同様に、ネクタイだって一歩間違えれば重大な事故につながる可能性があるのです。
ただ、最近は以前よりもネクタイの危険性が話題に上がることは減りました。それは、クールビズが浸透したことによって、社会の風潮が“ノーネクタイでもOK”という方向に変わったからです。
ネクタイの有無を自分の意思で自由に選べるようになれば、危険性を指摘したり、抗議の声を上げたりする人は自然と減っていきます。
ここではネクタイを例に挙げましたが、ハイヒールも、これと同じ経過をたどるのが望ましいでしょう。
KuTooは「女性だからこうしなければ」「男性はこうあるべき」といった性別による固定観念を再考し、多様性が認められる社会を目指す運動です。“当たり前”の社会通念を仕方ないと諦めず、誰もが嫌だと思うことは口にできる、そんな社会が早く実現することを願っています。
実際に職場でパンプスを履く女性の声
ネット上で「#KuToo」と検索すると、職場のパンプス着用規定に対する、女性たちのさまざまな本音を読み取ることができます。
ここでは、実際に職場でパンプスを履く女性の意見をまとめました。
健康を害してでも履かないといけないのは納得できない
特に多かったのが、パンプスを無理して履いたことで、健康に悪影響が出たという意見です。
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「かかとや足首の重心が不安定になり、まっすぐ立てなくなった。膝や腰も痛めてしまい、肩凝りも悪化した」
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「外反母趾が悪化した」
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「股関節を痛めてしまった」
このように、ネット上ではパンプスによる健康被害を訴える声が多数寄せられています。
確かに、パンプスを一日中履いていると、夕方頃には足先が痛くなってきて、かかとに靴擦れができてしまうことも少なくありません。それに、スニーカーやフラットシューズを履いているときより、疲労感も強い気がします。
もしかすると、パンプスが足に合っていないのかもしれないですし、その人の歩き方や姿勢も影響しているのかもしれません。しかし、これだけの痛みや疲れを感じるのであれば「仕事で履きたくない」という女性が多いのは当然といえるでしょう。
災害が多い日本には不向きなのでは
災害大国の日本に、動きにくいパンプスは適していないという指摘もあります。過去に関東地方で震度5の地震が発生した際は、パンプスを履いていた女性たちから、抗議や批判が殺到しました。
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「職場の最上階までハイヒールで上がったが、スニーカーのように早く走れず、危うく逃げ遅れるところだった」
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「パンプスで走って避難したことで、筋肉痛になってしまった」
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「電車が動いておらず徒歩で帰ったが、何kmも歩くのはとても辛かった」
大きな災害が起こった場合、帰宅時間に交通機関がストップしていることも考えられます。普段、電車やバスで通勤している距離をパンプスで歩くとなれば、足への負担は相当なものです。
それに、道路に瓦礫やガラスが散乱していたら、ケガをする危険性もあります。防災の観点でも、従業員の靴の規定は見直した方が良いのかもしれません。
蒸れるから夏は本当に辛い
パンプスはとにかく蒸れます。パンティストッキングを穿いていても、薄手のものだとほとんど水分を吸収してくれず、時間の経過とともに不快感は増すばかりです。それに、汗をかくと歩くたびに足が前に滑り、より痛みを感じやすくなります。
こういった、夏場のハイヒールの辛さに悩む女性たちからは、以下のような不満の声が上がっていました。
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「クールビズが浸透しているのに、ハイヒールやパンストの規定はなぜ変えてくれないのか」
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「足が蒸れると水虫になるし、かゆみや痛みで仕事に集中できない。せめて、夏だけでも通気性の良い靴を履かせてほしい」
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「以前勤めていた会社には『パンプスは素足で履かないといけない』というルールがあった。パンストや靴下が見えると恰好悪いと言われたが、蒸れるし不衛生だと思う」
クールビズでもパンプスは強制、素足で履かないといけない、といった社内規定が実在するのかについては、真偽のほどは定かではありません。
ただ、これらの話が本当であれば、なぜ不快感や痛みよりも「外見を良く見せること」が優先されるのか、疑問に感じます。
本革のパンプスは、通気性があってそれほど蒸れず、素足でも快適に履くことが可能です。しかし、ベースの素材にプラスティックを塗布して模様を刻む合皮素材は、本革よりも通気性に劣り、蒸れやすくなっています。季節に関わらず、素足で履くのはあまりおすすめできません。
それに何よりも、素足でパンプスを履くと、肌が直接パンプスに当たって、靴擦れがひどくなってしまいます。業務の効率化という面で考えても、見た目よりも従業員の健康を重視した方が良いのではないでしょうか。
パンプスを履くことで得られるメリットはあるのか
ここまでは、職場でパンプスの着用を強制されている女性の視点で話を進めてきたため、健康に及ぼす影響や災害時のリスクなど、ネガティブな面ばかりがクローズアップされてきました。
ただ、パンプスには女性にとって嬉しいメリットもたくさんあります。
具体的にどのようなメリットがあるのか、詳しく見ていきましょう。
脚を長く、細く見せられる
かかとが高いパンプスを履くと、腰の位置が上がって、脚が長く見えます。
また、重心が前に傾かないよう、膝をまっすぐ伸ばす必要があるため、脚のラインをきれいに見せられるのも大きなメリットです。
さらに、ふくらはぎに力を入れた状態を保つことで、筋肉が鍛えられ、脚痩せ効果も期待できます。
ヒップアップにつながる
パンプスを履き、内くるぶしを外側に見せるようにして立つと、膝上からお尻の筋肉が持ち上がり、ヒップアップにつながります。
ヒップラインは、その人の見た目年齢を左右する重要なパーツです。
体重が変わらなくても、お尻が引き締まるだけで、後ろから見たときの立ち姿が見違え、若々しい印象を与えられます。
背が高く見え、小顔効果も期待できる
モデル体型とされる8頭身を叶えようと思うと、顔のサイズは身長の8分の1以下でないといけません。
しかし、日本人女性の平均体型は6.5~7頭身と言われていて、スニーカーやフラットシューズだと、どうしてもスタイルが悪く見えてしまいます。
パンプスであれば、ヒールの高さの分だけ身長を高く見せることができ、憧れの8頭身に近付くことが可能です。頭身の比率が変わることで、小顔に見えるという嬉しいメリットもあります。
パンプスを履きたい人がいるのも事実!
「痛い」「歩きにくい」と言われ、何かと批判されがちなパンプスですが、女性のファッションには欠かせない存在であり、履きたいという女性が一定数いることも事実です。
その証拠に、パンプスはいつの時代も、幅広い世代から支持を得ていますし、今後もなくなることはないでしょう。
「女性だから美しく見せるべき」という社会通念の押し付けでパンプスを義務付けるのではなく、「きれいに見せたいから」「気持ちを切り替えるために」「ファッションアイテムとして」など、自分の意思で履きたい靴を自由に選べる世の中になってほしいものです。
【これまでのまとめ】
<Kutoo運動の背景>
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職場で女性がパンプスを履くことは“当たり前”であり、働く上で守るべきルールとして強制されてきた
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女優の石川優実さんが「職場では男女平等なのに、なぜ女性だけハイヒールを履かなければいけないのか」と声を上げたことでKuToo運動がスタート
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KuTooの主張は多くの共感を集め、海外や国会でも話題に上がるなど、社会問題に発展
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法改正はまだ実現していないものの、ハイヒールの着用規定を撤廃する企業が出てくるなど、社会の意識改革が進みつつある
<把握しておきたいポイント>
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KuTooはパンプスを否定するのではなく、社会通念として強制することや、男女差別に対する抗議
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「我慢の美学」を押し付けず、嫌なことやおかしいと思ったことには声を上げられる、生きやすい社会の実現
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パンプスをおしゃれや、気合いを入れるために履きたい人もいる
最後に「パンプスを履きたい」と希望され、AYAMEのオーダーメイドパンプスをご利用いただいた、Aさん・Bさんのエピソードをご紹介します。
AYAMEのパンプスをご利用されているAさんの場合
Aさんは、外に出かけるときに履くパンプスがなくて困っているということで、AYAMEにパンプスをオーダーされました。
ファッションやメイクが好きで、身なりには普段から気を遣っているというAさん。実年齢は70代だそうですが、姿勢も良く、とても若々しい印象を受けます。
「足に合わない靴やカッコ悪い靴では出かける気も起きないけれど、きれいな洋服や靴があれば、見てほしくて出かけたくなる」というのがAさんの持論だそうです。
パンプスが完成した際には「『お気に入りのパンプスを履きたいから』という理由で外出の機会が増えれば、引きこもりの解消や、運動不足解消など、社会問題の解決の一翼も担えるかもしれない」とおっしゃっていました。
AYAMEのパンプスをご利用されているBさんの場合
Bさんは、事故に遭ったことで、左右の足のサイズが大きく変わってしまったそうです。
既製品は、基本的に左右が同じサイズで作られているため、Bさんの足に合う靴はなかなか見つかりません。
スニーカーだとなんとか履けるものの、ヒールのあるパンプスなんてもってのほか。これでは、冠婚葬祭のときにも困るし、おしゃれだって満足に楽しめません。
Bさんは、事故によって制限を受けた今の状態に嫌気が差し「以前のような生活を取り戻したい」と、AYAMEでパンプスをオーダーされます。
左右それぞれの足にぴったり合うパンプスが完成し「これで靴のことで悩まなくて済む」と、とても喜ばれていました。
※Aさん、Bさんのお話は実際のお客様を声をベースに個人情報保護に配慮して再構成しております。
写真はご本人と関係の無いイメージ画像です。
オーダーメイドパンプスなら「足が痛い」「パカパカする」「蒸れる」が解決できる
記事の中でもご紹介した通り、パンプスには足が痛くなる、靴擦れしやすいなどのデメリットがあります。女性の中には「パンプスは痛いもの」と諦めて、我慢しながら履いているという人も多いのではないでしょうか。
その悩みを解決するおすすめの方法が「オーダーメイドパンプス」です。
そもそも、足の骨の形はひとり一人違います。
しかし、既製品は決まったパターンの木型で靴を大量生産しているため、自分の足にぴったり合うパンプスを見つけるのは本当に難しいのです。
AYAMEでは、オーダー時に3D技術で精密かつ正確な靴型を作成し、サイズはもちろん、つま先、足の甲、かかとの高さまで「シンデレラフィット」するパンプスをご提供しています。
かかとがパカパカしないので、長時間履いても痛みを感じにくく、パンプスを履いたまま走ることだってできます。
専用の靴型を作成したパンプスは、足と靴の間に余計なすき間が一切なく、靴擦れの心配もありません。
素材には本革を採用しており、蒸れによる不快感からも解放されます。
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